感染症への対策も抜かりなく。

感染症の種類と、感染防止の対策のまとめ

介護施設で起こり得る感染症の広がり方とその対策

 感染症の広がり方は、大きく4つに分けられる。1つ目は接触感染で、ウイルスや細菌が付着しているものに触れることで、感染が広がっていくのが特徴だ。

 接触感染で広がるのは水虫、感染性胃腸炎などだが、接触感染は比較的予防しやすい部類だ。タオルなどの備品の使い回しを避ける、こまめな消毒を心がける、手袋やゴーグルを使用するなどの対策である程度は感染を防げる。

 2つ目の飛沫感染は、感染した人がくしゃみや咳をして、飛沫を飛ばすことで感染が広がっていくタイプだ。マスクを着用すれば飛沫を飛ばすことは防げるが、食事の時間などマスク着用が難しい場面もあるのが厄介なところである。

 介護職員がマスクを着用するのは当然として、飛沫は広範囲に飛ぶ恐れがあるため、利用者にソーシャルディスタンスを心がけてもらうことも大事だ。

 3つ目の空気感染は、空気中に漂うウイルスや細菌が体の中に入り込み広がるタイプで、マスク着用で防ぐのは難しい。医療用マスクならともかく、一般的なマスクでは、限りなく小さいウイルスや細菌をブロックすることは困難だ。

 マスクによる感染予防効果もある程度の効果はあるが、100%防げるわけではない。そのため、マスク着用と同時に換気を心がけ、密閉された空間をなるべく作らないようにするといいだろう。

 4つ目の血液媒介感染は、感染症にかかった人の血液が他の人の体内に入ることで広がるのが特徴だが、介護施設で起こる例はそう多くはない。もっとも、採血などの場面で血液媒介感染が起こる可能性はゼロではないので、血液を扱う場合は細心の注意を払う必要がある。

高齢者に多い感染症の種類とその特徴

 若い人と比べて高齢者は免疫力が低下しており、感染症にかかりやすくなる。現在、新型コロナウイルス感染症が流行しているが、これも高齢者がかかると重症化しやすく、恐れなければならない感染症だ。

 新型コロナ以外にも高齢者がかかりやすい感染症は多くある。インフルエンザや肺炎、尿路感染症感染性胃腸炎、そしてMRSAなどがある。

 インフルエンザは毎年秋から春の初め頃にかけて流行する感染症だ。飛沫感染接触感染が主な感染経路で、高齢者がかかると肺炎や気管支炎を合併する恐れがある。

 肺炎はインフルエンザや風邪が原因でかかる場合もあるが、高齢者は唾液や飲食物が気管に流れ込んで炎症を起こす誤嚥性肺炎が多いのが特徴だ。高齢者は肺炎を起こすと命を落とす可能性があるため、注意が必要だ。

 尿路感染症は、尿の通り道に感染を起こすものだ。通常、尿の通り道は無菌なのだが、加齢と共に尿路の働きは低下する。そのため尿道口から細菌が侵入しやすくなり、感染症を起こすのだ。腎臓まで炎症が及ぶと腎盂腎炎になることもあり、注意が必要となる。

 感染性胃腸炎は「胃腸風邪」とよく言われるもので、下痢、腹痛、嘔吐などが起こり、熱が出ることもある。嘔吐、下痢が激しいと脱水症状を起こす危険があるため、見守る必要がある。

 そしてMRSAも高齢者に多い感染症だ。これは一部の抗生物質に耐性を持つ黄色ブドウ球菌のことである。黄色ブドウ球菌は常在菌のため通常は何も問題はないのだが、免疫力が落ちた高齢者が感染して肺炎などを起こすと重篤な状態になるので注意しないといけない。感染症対策に力を入れたい介護職は、これらの感染症を含めて言及されているこちらのサイトも興味深く読めるかもしれない。